時間栄養学について

近年、時計遺伝子の研究により、一つひとつの細胞に時計があることがわかりました。
生体リズムの中枢はヒト、ほ乳類では視交叉上核にありますが、生体リズムは全身の細胞で出現しています。
このことは時間異常による疾病を考える上で極めて重要です。
全身の臓器の細胞は、時計遺伝子が形成する時間システムの上で機能を発現していますので、時計機構の異常は容易に細胞や
臓器の機能不全に結びつき、高血圧や糖尿病などの生活習慣病を引き起こす可能性が示唆されております。
近年のシフトワーカーでの疫学研究では、生体リズムの異常がメタボリックシンドロームなどを増加させると指摘しています。
病気の症状にバイオリズム現象が見られることはよく知られています。
例えば喘息の発作は明け方に多く、虚血性心疾患の発症は朝から午前中に多い。
実際に明け方の喘息発作が発症しそうな時刻に薬成分の血中濃度が高まる工夫をした薬もあります。
こういった時間を考慮した飲み方を研究する分野は時間薬理学と呼ばれています。
同じような視点で栄養を考えたのが時間栄養学で、時間軸上に展開される栄養素の吸収、分布、代謝、排泄等を研究しています。
例えば、小腸の糖吸収システムでは、糖輸送を担うトランスポーター遺伝子にも顕著な昼夜のリズム発現が認められます。
食べる前にトランスポーターの働きを高めておいて、糖がスムーズに吸収されるように調整されています。
また、大腸での体内時計の役割としては蠕動運動の調節が考えられます。
ヒトでは一般的に昼、朝、夜の順にリズム性が高いため、時差の大きい海外旅行やシフトワークでは
腹痛、便秘、下痢や精神疾患が起こりやすいのです。
近年増加している過敏性大腸炎は、シフトワーカーに多いことなどから、体内時計の不調だと考えられています。
よく夜食は太ると言われますが、夜にカロリーを摂りすぎると、同じ1日の他の時間帯の中でカロリーを摂りすぎるよりも
肥満することは柴田教授の研究結果が示しております。
時計遺伝子の作用により、夜の方が摂取エネルギーを脂肪に貯める酵素活性が高いということなのですね。
その一方で、時計遺伝子には関わらないけれども栄養素の摂取順のような時間に関わる栄養学があり、
タイミング栄養学と呼んでも良いと思います。
遺伝子にかかわらず、摂るタイミングも重要な食生活の中のアドバイスであり、それによる病気の予防も大変重要な課題だと考えられます。
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